新記号論 読書会 第八回 (特別回)

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 筆者の石田さんより連絡をいただき、読書会に参加いただくことになった。事前にブログ管理者(nagataku13com)の質問をご連携しご返答いただくところから始まった。その後、他参加者からの質問を受けていただき、会を進めた。

 記録を残したいと思って書いてみるが、抜けているところがいっぱいあるのがわかる。まさに、聞こえることしか聞こえないを体感している。次の機会があれば、レコーディングの許可をいただけるようにしようと思う。

【質問①】
正逆ピラミッドとホメオスタシスの図、フロイトの図の関係について

240page の記述
『ダマシオの樹とフロイトの図が、・・・(略)、この二つの三角形の底辺が交わった面、「記号の三角形のボトム」に対して、
横から、つまり三次元的にダマシオの樹とフロイトの図がくっついている感じでしょうか』

こちらの正確なイメージがわきませんでした。
2つの想定を作ったのですが、こちらについて説明いただけたらと思います。

 自分としては、想定②だと思っているのですが、読書会で話したときは①なのではということになりました。わかりづらいかもしれませんが、聞きたいのは、どのように「くっついている」のかというところになります。
縦なのか、立体的に並行なのか。

この質問をさせていただいたのは、新記号論p235「記号の正逆ピラミッドにフロイトとダマシオを位置づける」でいいたかったことを知りたかったからです。フロイトとダマシオを結びつけて、スピノザとつなげるというのは、第三講義の最初にありました。その目的から言うと想定②のほうがフロイトとダマシオの図が同じ構図となっているということが言えるのではないかと思います。
想定①だと正逆ピラミッドのボトムから欲動エネルギーが流れてくるのは同じですが、その構図が同じということは言えないのではないかと思います。

 【石田さんのご回答】

 まず、位置づけについては深く突っ込まれるとなかなか厳しい。

 この章でいいたかったことは、記号のピラミッドのボトムになにがあるのかということ。技術の進化により、これまでは書かれた文字を介したコミュニケーションしかできなかったのだが、さまざまな痕跡を検知できるようになった。それは文字で表される概念ではなく、スマホなどの高性能な機械が書き取ることができる痕跡、それらを集めた像、意味を持つようになると象徴となっていく。これまでは象徴の部分しかなく、それらを取り扱うことができるのは高度な知識をもつ人たちだけだった。

 記号のピラミッドでは、アナログ革命から始まる技術の進化により、かつては得ることができない精度で痕跡を拾い類像とすることができるようになったことを表している。

 逆のピラミッドでも出発点は同じ。現在の技術ではスマホのセンシングデバイスで身体のレベルでのデータを集めることができる。記号のピラミッドのボトムにあるのと同じようにさまざまな痕跡を高い精度で集めることができる。アナログ技術では音や光や電波を介して現実をありのままに近い精度で記録することができる。それらを、機械が処理しやすい単位に変換し(デジタル)、それらをアルゴリズムをもった機械処理を行うことのできる仕組み(プログラム)で加工する。この段階で機械は、意味のあるデータのまとまりとすることができる。

 正逆ピラミッドでいいたかったのはそのような現状を表したもの。

 このような現状で、人間はどのようになるのか、それを追求していくためのモデルとして、ダマシオの樹が参考になる。

 スピノザとつなげるという点においては、知の体系をおさえるにはどうすればいいのかという話があった。今起きていることを知るためには、現時点の論文や本をおさえておけば、わかるのか。それだけでは足りないことがある。現在の技術の仕組みや説明になっているかもしれないが、そもそもそれはなんなのか、なぜそれはそうなったのか、技術の発達により人間の心や身体にどのような影響があるのか、ということを探求するためには、必ずしも最新の知だけでは足りない場合がある。

 たとえ話として、星の話をすると、200年前は見えていた星座が現在だと見えないということがある。フロイトだと100年前でスピノザはさらに250年前となる。スピノザの時代に人間について考えていたことを、見ることで人間の根源的な姿がみえてくる。それは、現在の新しいメディア環境において、人間はどのような影響を受けるのかということを考えるうえでの見取り図を与えてくれる。

 正逆ピラミッドのボトムは身体コミュニケーションの箇所である。そこでダマシオを融合させることでどういう身体コミュニケーションが取られ、人の意識処理系の正ピラミッドまたは機械の処理系の逆ピラミッドに繋がっていくか、とりわけ今のSNSで無意識にどういうコミュニケーションを取っているかの理解に繋がる。フロイトの融合もそう。
 スピノザを理解すると、感情、情動の反応がボトムにあるということと、ダマシオの「ソマティック・マーカー仮説」での情動の捉え返しにより感情や欲動が生まれる、というのと繋がる。コミュニケーションは表情や言語だけでなく、まずは身体で取っているということを明らかにしたかった。

【質問②】
ソシュールとフロイト p167

後半にあるフロイトの欲望と抑圧の原理についてです。フロイトの理解が足りないのだと思いますが、読解を進めるうえで大事だと思いますので、ご質問と致しました。
「聞きたいことしか聞こえない」という原理を持っているということですが、それが「聞きたくないことこそ聞こえる」ということになる道筋がわかりませんでした。

ソシュールの「聞こえることしか聞こえない」ということとの関係がわかりませんでした。音として、聞こえる(認識できる)ことしか聞こえないということだと思います。
フロイトの欲望と抑圧の原理からみると、聞こえる(認識する)、というところに欲望と抑圧によるフィルタリングがかかるということなのでしょうか。

音として100のことを耳から音の振動として認識できても、心の装置で抑圧している内容からみて70の聞きたいこと、30の聞きたくないことに分裂してしまう。認識としては、70のことをしているが、実は30の抑圧している内容も聞こえており無意識の抑圧は強化されていく、ということでしょうか。

 【石田さんのご回答】

 だいたい、認識の通りです。

【質問③】
ソシュールとフロイト p167

ソシュールの電話モデルを複数につなげて集団脳のモデルを作られておりましたが、お互いに書き込み合っていくとどのようになるとお考えでしょうか。
どの脳も似たような内容になっていくのでしょうか。もしかしたら、脳科学のようなものでのシュミレーションのようなことをしてみないとわからないのかもしれないですが。

モデルの設計によるのかもしれないですが、P172の図19を見ていると、共通の集団脳になるイメージがわきませんでした。

 【石田さんのご回答】

 集団脳は同じものになっていく、という想定ではないか。お互いの脳に書き込み合うということなので、その当時の社会状況なども反映していく。

 ※管理者の感想

 印象に残ったのは、質問①に対する回答だった。正逆ピラミッドがどういうものなのかということがよりよく分かった。ボトムのインターフェースを起点として人間と機械でどのようにそれを理解し、処理していくのかということを図式にしている。技術の発展で、いつになく精度の高い痕跡を収集できるようになったことで、どのような影響があるのか、何が生まれるのかということが明確なモデルになっている。

 スピノザを導入した理由についてのご回答も良かった。正直、読書会で読んでいるときはよくわからず、早くこの部分を終わらせてしまいたかった部分でもあったが、もう一度、読み込んでいきたい。

 【20代フリータ H氏の質問】

 なぜ読書会に参加しようと思われたのか、ゲンロンカフェでのイベントなど以外で読者と交流をもつことはあるのでしょうか。

 【石田さんのご回答】

 この読書会については、ずいぶん前から存在を知っていた。著者として、新記号論に限らず、書いたものに対する感想などはウォッチしている。現在のようなネット環境があるのでそれらのチェックはしている。この読書会は回数も重ねてきているので、参加してみようと思った。

 また、コロナ状況下において、ゲンロンカフェだけに限らず、書店で行うトークイベントなどもできないので、読者と交流をもつことがほとんどなくなってしまったこともあった。

 【30代IT関連技術者からの質問・コメント】

 仕事で、コロナになる前からリモートで仕事ができる環境を作ることをミッションとして取り組んでいた。新記号論では、現在のネット環境で、人間の心にどのような影響を与えるのかという考察がされており、大いに参考になっている。SNSの発達で社会にいい影響だけでなく、人々の心を不安定にするようことも起きるようになっている。

 リアルで対面する事で落ち着き、何でもリアルで済ませたがるおじさん達に、デジタル的コミュニケーションで済ませられるようなテレワーク環境を提示し、良い意味で効率的な仕事環境を築きたい。これに対する何らかのヒントを頂きたい

 【石田さんのご回答】

 それはまさに、現役の皆さんが取り組んでいくべき問題ではないか。

 一つ言えるのは今の技術でできること、を明らかにする事ではないか。マップをつくる。他に環境でできること、意識でできることも明らかに、マップにする。

 【初参加・編集者の方】

 1つ目、ゲンロンカフェでイベントを鑑賞しておりました。とても濃密な内容でしたが、事前に東さんとの入念な打ち合わせなどしているのでしょうか。

 【石田さんのご回答】

 打ち合わせは特にしていない。イベントの数時間前にプレゼン資料を連携する程度。東君はとても頭のいい人なので、その場でやり取りをしながら進めている。イベントが濃密な内容になるのは、東君は一つ一つのプレゼン資料を理解するまでとことん質問してきて、それに答えるというやり取りをすることになるので、資料の内容の理解はもちろんのこと、付随した内容にも触れていくことになる。

 そうしたやり方をしているので、内容が濃くなり時間も長くなることになるのだと思う。

 【初参加・編集者の方】

  2つ目、忘れてしまいました…

 【ニート・漫画書くのが趣味の方】 ※初めてでマイクオフだったこともありよく知れませんでした。twitterみるかぎり、ゲンロン漫画スクールを受講されているのでは

質問はですね、記号学についてです。「わからないなりに歴史をみると、ロック~ライプニッツというヨーロッパというローカルで、急に普遍的な記号学という計画が立ち上がっているように見えてしまいます。なぜ、ヨーロッパのロックやライプニッツでだけ、そのような発想になったのでしょうか?何か背景や動機、直面していた問題があるのでしょうか?」です。

 【石田さんのご回答】

 歴史を考えるとギリシャ哲学にまでさかのぼることになる。アルファベットの発明が革命的だった。歴史上ではじめて、発音している言葉と書いている言葉が完全に一致していた。プラトンの対話篇は、ソクラテスとだれかが会話している形式になっているが、このギリシャでつくられたアルファベットがあったからこそ成立したもの。

 それまでは、子音しかなかったので、文字を知っている人だけで使えるものだったが、母音と子音の組み合わせで表現できるようになったことで誰もが、文字を読めるようになった。その発明から、普遍的な記号学が立ち上がったといえる。

 【管理者の質問】

 人工知能について、ご意見を伺いたい。新記号論・第三講義では人間と機械が同じ痕跡をそれぞれどのように処理していくのかを正逆ピラミッドで表して議論を進めておりました。逆ピラミッド側の人工知能は人間の言葉を理解できるようになるのか、会話ができるようになるのかというところでご見解があればお聞きしたい。

 【石田さんのご回答】

 (管理人の力不足で理解が追いつかない部分が多かった)

 機械が人間の言葉を意味理解できるようになるかと問われれば、それは不可能。人間と比べて機械は、例えば今その瞬間というのをコマ撮りした時の切り取りの適切さ。機械は1秒間に50コマ切り取ることができ、人間のそれは仮に10コマくらい。そこで機械の切り取ったコマが今この瞬間を表す適切なコマかと言われれば、そうでないかもしれない。切り取り提示したコマと次のコマの間にあったコマかもしれない。これは技術的無意識ではあるが、それが正確か適切かは機械には決められない。

 第一講義に書いてあるが、アナログ革命で起きたことは、技術の発展により「技術的無意識」というものが発生した。人間が知覚できないようなレベルで音声や画像や映像を取得できるようになった。アナログ革命で発明された機械が書き取る「見えない・聞き取れない」文字は人間には知覚できないものである。それらの文字を再生すると人間には知覚できない文字がゆえに、知覚できるものがある。映像であれば、人間の処理能力を超える速さで、画像が切り替わっていくので動いているように見えてしまう。

 人間と機械との関係は、このようなものであり、人工知能がどうなるかというのは人間との関係において発展していくものである。何をさせるのかということが大事になる。

【追加の質問】

 このような理解であっているか聞きたい。
 その50コマの切り取りで提示されたコマが人間にとって「適切」と判断されればそれは適切と言えるはずだし、今まで人間はそう言ってきたはずだ。あくまで判断、決定するのは人間であって、機械はその補助具。そのように道具として役立てるならば機械は、人工知能は有益だし、そのように使うべき。

【石田さんのご回答】

 そのような理解で合っている。

【ニート・漫画書くのが趣味の方】

 記号の正ピラミッドで、インデックスとイコンの区別がよくわからなくて、表情や感情が身体的なのは、わかるのですが、それ=表情は、どうしても映像的=アイコン的にしかわからないように聞こえました。二つはどう区別されるのでしょうか?

 【石田さんのご回答】

 表情の画像があるとすると、機能を持つ場合はiconで、それそのものはindex、何らかの意味を持つようになるとsymbolという整理。

 ちびまる子ちゃんでよく出てくる、顔に縦3本線の表情という記号(汗。戸惑いを表す)が合った場合。
 まず戸惑いという意味を持ったマークは、シンボル。顔に3本線のマーク自体は、アイコン。人が呆れ、次に何を言ったら(したら)良いかわからない時は、顔の皮膚を伸ばし、その相がそのまま張り付いたような状態を持続させる、という戸惑いを見せる際の人相の兆候(p.258でいう「感性的痕跡あるいは現象のサンプル」)が、インデックス。インデックスは身体に関わる情報。光景、表情など。

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